日本の食料自給率
深町 享一
はじめに
この論文では、日本の食料自給率が1965年から落ちている原因や背景を過去のデータから調べ、そこからおこる問題の解決策を検討する。
1 食料自給率について
食料自給率とは、国内で消費される食料のうち、どの程度国内産でまかなわれているかを表す指標であり、食料を省略して自給率と言われる場合もある。農林水産省のホームページに掲載している食料需給表には、「品目別自給率」、「穀物自給率」、「供給熱量総合食料自給率(カロリーベース)」、「金額(生産額)ベースの総合食料自給率」の毎年度の数値が掲載される。「食料・農業・農村基本計画」には、各々の自給率の目標が設定されている。品目別自給率は、品目ごとの自給の度合いを、穀物自給率は、基礎的な食料である穀物全体の自給の度合いを示したものである。これらは重量ベースで算出される。熱量ベース総合自給率及び金額ベース総合自給率は、全ての食料についての総合的な自給の度合い(総合食料自給率)を示したものである。多種多様の品目を総合的に扱うには、重量をベースに算出するのは適切でないため、算出のベースとして、食料の熱量(カロリー)と金額とが採用された。
1.1 カロリーベース
通常、日本の食料自給率として使用しているのは、カロリーベースの食料自給率である。これは、食料が生命と健康の維持に欠くことのできない最も基礎的で重要な物資であることから、その基礎的な栄養価であるエネルギーが国産でどれくらい確保できているかという点に着目している。食料の重さは、米、野菜、魚などどれをとっても重さが異なる。重さが異なる全ての食料を足し合わせ計算するために、その食料に含まれるカロリーを用いて計算している。カロリーベース自給率の場合、牛乳、牛肉、豚肉、鶏肉、卵には、それぞれの飼料自給率がかけられて計算されている。輸入飼料への依存度によっては畜産物の生産は、この指標の数値への寄与が小さくなるか、むしろ
数値の引き下げ要因となる場合もある。このため、熱量ベース総合自給率のみで食料と農業の状況の全体を代表させることには限界がある。また、これはあくまで熱量による評価の結果であるので、国産農産物全体の量を示す指標として使用するのは厳密性を欠く。カロリーベースの食料自給率(平成18年度)=(国民一人一日当たり国産熱量[996kcal])/国民一人一日当たり供給熱量[2,548kcal]×100=39(%)となる。
1.2 金額ベース
金額ベース総合自給率の算出ベースである「額」とは、当該年度の「食料価格量」のことである。価格とは、国産食料については農家の販売価格であり、輸入食料につては、国境における価格(CIF[運賃・保険料込み条件]価格に関税等を加えたもの)であるまた、畜産物および加工食品については、輸入飼料及び輸入食品原料の額を国内生産額から控除して算出する。この指標の数値には、熱量の小さい野菜・果実の生産も寄与する。輸入飼料によって畜産物を生産している場合も、付加価値の創出が数値に寄与する。このように、この指標には、生産活動によって創出される経済的価値が反映されることになる。また、国産品の輸出を無視できる場合には、この指標を、国産農産物全体の金額換算の国内シェアを示す数値として使用できる。ただし、この指標の数値には、生産量以外にも、国産品と輸入品との間の生産コスト・品質等に由来する価格差や、為替の変動も反映されるため、数値の変化を評価する場合には、原因の分析などを行う必要がある。生産額ベースの食料自給率(平成18年度)=(食料の国内生産額 [10.2兆円])/食料の国内消費仕向量[14.9兆円]×100=68(%)となる。
G
出典:農林水産省
2 日本と世界の自給率の比較と問題
2.1 年代別の推移
出典:農林水産省
現在、日本の食料自給率は40%。対してフランスは130%、アメリカ140%、イギリス74%で、日本は先進工業国の中で圧倒的に食料自給が低い。イギリスのようにかつては低い食料自給率であった国でも、自給率の顕著な上昇がみられる。そういった意味では、日本の状況は特異である。国際分業に関する比較優位の議論に基づけば、こうした状況はむしろ好ましいと考えられる。農林業に比較優位を持たない日本であるので、自動車など比較優位をもった産業に資源を集中し、その産物を輸出してできるだけ海外から農産品を輸入するのが消費最大化につながるからである。海外から農産品を輸入できるからこそ、日本は低価格で安定的な食料を確保できる。しかし、自給率の低さは言い換えれば食料の海外依存度の高さである。国民の間に、「もし何らかの理由で食料の輸入が止まったらどうなってしまうのだろう。」という漠然とした不安がある。
2.2 食品別の自給率
品目 |
1965年 |
2004年 |
砂糖類 |
31 |
34 |
魚介類 |
110 |
55 |
鶏肉 |
97 |
69 |
豚肉 |
100 |
51 |
牛肉 |
95 |
44 |
リンゴ |
102 |
53 |
ミカン |
109 |
99 |
果実 |
90 |
39 |
野菜 |
100 |
80 |
大豆 |
11 |
3 |
サツマイモ |
100 |
94 |
穀物 |
5 |
0 |
小麦 |
28 |
14 |
コメ |
95 |
100 |
出典 週刊ダイヤモンド 食卓危機 2007.7.21
3 日本の自給率低下の原因
3.1 食生活の変化
出典:農林水産省 我が国の食生活の変化
日本の食生活は戦後から西洋文化が入ってきて、野菜や魚や米中心の食生活から肉や油脂のどの多めに取る食事に変化した。1965年から2004年の間、畜産物と油脂の消費は2倍以上に膨らんだ。かたや主食であるコメの消費は半減している。もともと自給率の低かった畜産物や小麦や油脂類を食べて、自給率の高いコメを食べなくなるようにすれば自給率が落ちるのは当然である。
3.2 関税率の低さ
日本は有数の食料大量輸入国であり、日本ほどグローバル化食料市場はないといってもいい。日本の農作物の平均関税は12%であり、農作物輸出国であるEUの20%、タイの35%、アルゼンチンの34%よりはるかに低い。コメや乳製品の農作部に関しては高関税を維持しているが、こうした最重要品目は1割にも満たない。そのほかの関税は相当低く、野菜の多くは3%である。関税の引き下げが食料自給率の低下につながることは、大豆、トウモロコシ、オレンジ・リンゴ果汁などを通じて経験している。たとえば、オレンジ・リンゴ果汁では1994年に輸入枠を撤廃し自由化を行い、翌年に関税を引き下げによって、ミカンの食料自給率が15%近く下がってしまった。今、日本はアメリカから自由貿易協定締結に当たってコメを含む農業分野の例外なき関税撤廃を要求されており、日本の経済界も賛同の意を示している。自由貿易協定によって製造業が恩恵を受けるためであり、そこには食料安全保障の視点はない。
3.3 農業の衰退
日本の農業部門の経済全体に対する割合は縮小してきた。これは先進国共通の現象である。しかし日本と他の国の間には大きな違いが見られる。ほかの国と比較したときの日本農業の特徴は高い兼業比率、非効率な零細経営、高齢化の進展の3つに集約される。日本の農業政策の柱の1つは1952年に制定された農地法である。農地法は戦後の農地改革によって生まれた多数の自作農を保護する目的があった。
4 自給率を上げる方法
4.1 日本ができる対策
平成12年3月に農林水産省が決定した食料・農業・農村基本計画(以下「前基本計画」という。)では、食料自給率目標を掲げることは「国民参加型の農業生産及び食料消費の両面にわたる取組の指針として重要な意義を有する」とされた。
インチキ食料自給率
いままで自給率をあげる方法を書いていたが、今の食料自給率はいい加減という意見もある。こんな無意味な指標を国策に使っているのは日本しかない。それ以前に、食料自給率を計算している国も日本だけだ。自給率目標設定について
食料自給率の目標は、不測時の自給力との関わりで検討すべきであるとの主張がある。これは、目標の自給率を実現するために稼動する農地、農業労働力等の農業資源で不測時にどれだけの食料が供給できるのかが重要であるとの考え方に基づく。
謝辞
参考文献
[山下] 山下惣一 鈴木宣弘 中田哲也 食べ方で地球は変わる 創森社2007
[レスター] レスター.R.ブラウン 食糧破局 ダイヤモンド社 1996
[伊藤] 伊藤元重 日本の食料問題を考える NTT出版 2002
[農業] 月刊農業経営者 インチキ自給率 農業技術通信社 2008 .10
[ダイヤ] 週刊ダイヤモンド 食卓危機 ダイヤモンド社 2007.7.21
参考webサイト
[Wikipedia] 食料自給率 アクセス日2008.11.2
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%A3%9F%E6%96%99%E8%87%AA%E7%B5%A6%E7%8E%87
[月刊農業経営者] インチキ食料自給率 アクセス日 2008.10.25
http://www.farm-biz.co.jp/backnumber/0810/
[農林水産省] 食料の安定供給 アクセス日 2008. 11.03