更新 2005-07-10
近頃,蕎麦のゆで方が全体的に固くなってきている. パスタも“アルデンテ”(al dente) と称して,生っぽいゆで方が流行っていてそれも気に入らないのだが,まぁそれはそれで勝手にしろだ. ところが,大好きな蕎麦が,しかも老舗として有名なところの蕎麦切りが,固く生に近くなってきている. これでは大問題なので,このページを作って,全国の蕎麦屋さんに注意してもらうことにした. (似たようなことを考えていてアップしている人がいるかと思って探してみたが,こういうページを見つけることができなかった.だから,やむを得ず自分で書くことにしたのだ.) (近頃では,“アルデンテ議論”という掲示板がある.2005-06)
パスタの“アルデンテ”に日本人ほどこだわっている民衆はいないんじゃないだろうか。 そうなった背景に,低級なテレビ番組や雑誌記事の影響があると思う. “芯がある”というのは,誰にでも判りやすい.それがよいことであるかのように洗脳したのは,マスコミの罪だと思う. “芯がある”のと“コシがあって旨い”というのは別のことなのだ.
確かにイタリアのリゾットはコシがあった。噛むとグッと歯ごたえがあって旨かった。 だが、スパゲッティは固くはなかった。 イタリアで,日本ほど固いスパゲティは食べたことがない. その理由は,ほとんどが生の麺を使っているからだ.
現在多くの日本のイタリアン・レストランが出すスパゲティは、乾麺なのにゆで方が固すぎる. 早い話が生なのだ. 生のでんぷんは消化も悪いし,当然旨くもない. (生の結晶状態のでんぷんはβデンプンといい,加水しながら加熱して糊状になったでんぷんはαデンプンという.α化すると,結晶構造が壊れて消化しやすくなる.生米と焚いたご飯との違いだ.)
では,生なら旨いかというと,そうとは限らないから困る.実際に“生”を売り物にしていながらまずいスパゲティを出す店がある.
いわゆる生っぽい“アルデンテ”にするのは,麺がしっかりしていないからだ. もともと,スパゲッティにしろ,リンギーネにしろ,うどんにしろ,蛋白質を多く含む上等な粉で丹念に作った麺なら,しっかりコシがあって,ゆでたってちょっとやそっとでは軟らかくなりすぎないものだ. それは,餃子だって蕎麦だって同じことだ.
麺を自分で打っているちゃんとした蕎麦屋で,麺を生ゆでにする必要はないのがお解りいただけただろうか. 日本の蕎麦屋さんには,もっと麺に自信をもって,自分でおいしいと思う程度にほどよくゆでてほしいと願う. 客となる皆さんには,“アルデンテ”という言葉に振り回されて,固いのがよいことなのだと思い込まず,しっかり自分でおいしいと感じるものを“おいしい”と評価してほしいと思う.
(掲載 2003-10-13)
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