DHMO (Dihydrogen Monoxide) は水酸の一種であり、無色、無臭、無味の化学物質です。比較的古くから工業活動に使用されていましたが、産業の巨大化や軍事技術の発展に歩調を併せるかのように、その使用量は増加してきています。
DHMOは、毎年無数の人々を死に至らしめています。報告される死亡例の多くは、偶然液体状のDHMOを吸い込んだことによるものですが、危険はそれに留まりません。カナダの医学病院において、固形状態のDHMOに接触すると身体組織に激しい損傷を来たすことが実験で確認されています。又、DHMOの吸収が発汗、多尿、腹部膨満感、嘔気、嘔吐、電解質異常などを引き起こすことも臨床的に確認されています。
アメリカの国立衛生研究所のレポートには、末期癌患者から採取した癌細胞には多くのDHMOが含まれているという事実が(さりげなく)記されています。癌の研究者にとってこれは公然の事実となっています。
訳者の知人の医師も、この事実を認めています。彼女は「まともな医師ならばこの事実を否定できるはずはない」とも述べています。
南米で採取された酸性雨のサンプルからもDHMOが検出されています。地球温暖化の原因となる「温室効果」にも影響があることが統計的に示されています。北米穀倉地帯における地表侵蝕を促しているとの報告もあります。
日本で採取された酸性雨のサンプルからもDHMOは検出されています。
汚染は広範な地域に及んでいます。米国内の多くの河川、湖沼、貯水池でDHMOが発見されています。汚染は米国に留まりません。北米およびヨーロッパの人口100万以上の全ての都市において、 DHMOの存在が確認されています。都市部だけではありません。 DHMOは南極の氷の中やペンギンの体内からも発見されており、人里離れたサハラ砂漠の真ん中においてさえ、少量ながら存在が確認されているのです。
我々の調査によれば、日本国内の人口30万人以上の全ての都市でDHMOが見つかっています。
これらの事実にもかかわらず、 DHMOは多くの大企業において溶媒や冷却の目的で利用され続けています。 原子力関連施設や大規模コンビナートでの消費量は大きく、又、遺伝子操作や動物実験にも使われています。工業のみならず、農業においても特に大規模農業において例えば農薬散布などにも大量に使われています。特殊な処理を行えばDHMOの除去は可能ですが、商品価値の低下とコスト高をもたらすため、ほとんど行われていません。結果として、ジャンクフードを始め、工業的に大量生産される食料品のほとんどにはDHMOが含まれたままなのです。
大企業は使用済みのDHMOを河川、海洋に投棄しています。学会も政府もDHMOの投棄による環境への顕著な悪影響を認めておらず、従ってこの行為は全く合法なのです。自然生物への影響が懸念されますが、法律的には現在何もできないのです。
政府はDHMOの製造、頒布に関する規制を「合理的理由がない」として拒んでおり、学会も産業界も政府のこの動きを支持しています。
このあたりの事情は、米国も日本も変わりません。日本政府も日本の学会・産業界もDHMOの顕著な悪影響を認めていません。
軍もDHMOに関する研究に巨額の費用を投じてきました。 軍事行動時にDHMOを効果的に利用するためです。陸海空海兵の種別を問わず、多くの軍事施設にはDHMOが備蓄されています。米陸軍のレポートには、DHMOが近代戦の遂行に不可欠であるとの記述すらあるのです。
沖縄の米軍基地にDHMOが備蓄されていることはほぼ間違いありません。厚木や横須賀についても備蓄を示唆する資料が米軍の公開データの中に含まれています。又、日本に寄港する米軍艦艇がDHMOを積載していることを米軍当局は否定していません。日本政府もこの事実は承知しているはずですが、抗議を行ったことはありません。
妊娠中の母親がDHMOを摂取した場合、胎盤を通じて胎児へもDHMOが伝わることが実験的に証明されています。授乳期間中の母親がDHMOを摂取した場合に、 母乳にDHMOが含まれることも実験的に証明されています。多くの子供達、とりわけ第3世界の子供達にとって、体内のDHMOの量は生存と成長に直接影響を及ぼす問題になっています。
ダイオキシンなどの化学物質や 環境ホルモン(外因性内分泌撹乱化学物質)などによる環境への影響が世界的に問題になっている今、わたくしたち、地球の未来を案じる市民は、平和的手段を使って社会にDHMOの問題を広く呼びかけるものです。
又、この訴えに対する政府、企業、学会からの不当な弾圧に対して決して屈しないことを宣言します。
賢明なる読者諸氏はお気づきのことと思うが、DHMOとは水のことである。 DHMO論自体は科学教育の世界では良く知られたネタである。この文章は、私が独自に書いたものだが、類似の文章は世界中で見つけられるだろう。
この文書を書くにあたっては、まず幾つかのDHMO文書に目を通し一通りの情報を抜き出した。それから、環境保護と称するアピールを幾つか読み、彼等の好きそうな言い回しやキーワードを抜き出した。最後に、それらをまとめたものである。これといった知的作業は行っていない。
この文章から得るべき教訓は簡単である。
実際、ダイオキシンや塩化ビニールなどの害よりも、車やタバコなどの害の方が遙かに大きい。しかし、車やタバコを攻撃するのは難しい。車メーカーやタバコメーカーを攻撃することはあるが、実際に害をばらまいているのは一般消費者である。自分を正義の側、攻撃する側に置きたがるのは人の常だが、車やタバコを叩くときに自分を安全な場所に置くのは難しい。なにより、(タバコはともかく)車にそれなりの大きなメリットがあることは多くの人が理解しているところであるからだ。(自らメリットを全部捨てるのは、実際非常に困難である。)
そこで、攻撃の容易なダイオキシンなど(これなら少数の企業を攻撃すればすむし、一般市民は自分を加害者ではなく被害者であると(誤った)納得をすることができる。)をバッシングするわけだ。
ダイオキシンや塩化ビニールへの対処ももちろん重要だが、科学の目を失えば行き着く先は偏狭なカルトである。「人は正義を行っていると確信しているときに、最も邪悪な行動を平然と行うことができる」との警句を常に忘れてはならない。
もちろん、この警句を口実にして正義を嘲笑しても何も問題は解決しないことも申し添えておく。
友人から、「リンクされているのを見て辿ったら、君のところだったよ」と言われて、中途半端で放置しておいたページを思い出した。調べてみると確かに、GoogleでDHMOを検索して日本語のページを探すとかなり上位にある(Googleでの検索順位は日々変動する)。
一応、自分の知る限りではオリジナルはここに書かれている1997年の文書で、アメリカの中学生 Nathan Zohner がコンテストで賞を貰ったというニュースに覚えがある。詳しくはhttp://www.dhmo.org/ (ここにはFAQもある)。日本語だとこちらが良いのではないだろうか。
2004年の3月15日のニュース(こちら)で、カリフォルニア州のALISO VIEJOという町が、 DHMOを含む製品の使用を禁止する法案を作った、と報じられた。それで検索が増えたのだろう。
本来であれば、当時探して参考にした文書とかも明示するべきなのだろう。一応探してみたのだがメモは残っていなかった。ほとんどの言い回しとかは、どこかからか持ってきたものなので、参照元を示すのがフェアだと思うが、そういう理由で提示できない。御容赦頂きたい。
更に追加。
■ 上記の作品は,このページの管理人(西村和夫)が書いたものではありません.(2010-05-04)
■ 上記内容の原作者 phoenix◎fa2.so−net.ne.jp さんのサイトは“2005年3月末をもって閉鎖”になりました.
このページは,西村が原作者の許可を得て保存し,公開しているものです(よくできているので捨ててしまうのはあまりにもったいない). -- 西村和夫 (2005-04-01)
■ 表題 <TITLE> 内と本文先頭の英物質名 "Dihydrogen Monoxide" のつづりを正しくしました.誤った綴りがはびこってきているのに気づいたので.-- 西村和夫 (2006-07-04)