慶應義塾大学工学部 1974 年卒(32 期)同期会 |
計測科の神部君が表彰されました. |
同期の神部信幸君が,同窓会から表彰されました.
下に表彰式典と特別講演会の画像を掲載しています.
同窓会研究・教育奨励基金による同窓生表彰 2011 年 6 月 4 日 神部信幸君 計測工学科卒 米国フェニックス・ベンチャー・パートナーズ ゼネラルパートナー,共同創業者 |
この 10 数年間,アメリカ西海岸のシリコンバレーで,アメリカのベンチャーキャピタルから資金を受けナノテクベンチャーのパイオニア・ベンチャーを創り上げた日本人起業家といえば私のことです.残念ながらまだ私一人です.ですから,国の活性化と塾のグローバルな未来のために,科学・技術分野で学び発見や発明を志す理工学部や大学院の皆様にとってベンチャーもやりがいのあるキャリアであることを伝えたいと思います. |
そもそもベンチャーとは,高度の知的生産をハイスピードで成功率高く実践し,社会に革新的技術を製品として届ける素晴らしいツールです.日本でも現代を代表する多数の大企業は創業者のビジョンから始まったベンチャーだったのです.2008 年以降起きた金融バブル破綻の中,日本でも従来の企業戦略から転換し次世代の新技術や新事業に軸足を移していこうと頑張っている企業が増えています.その中で新事業を生み出そうというプロセスも正にベンチャーなのです. |
今回の受賞を機に,慶応義塾大学工学部当時に端を発した“Small World”への興味と挑戦の足跡を振り返りました.学部の2年ごろ出会った Scientific American 誌に載った2次元カーボン層,つまり原子1層からなるフィルムの話に大変興味を抱いた私は,その後材料表面や超薄膜など小さな世界に魅了されていきます.ボストンにも留学し,更に2次元や1次元・0次元といった極微小な材料空間を創造し光・電子デバイス応用を探索しました.皆様は,これらの仕事は単に基礎科学の範疇だと思われるかもしれませんが,実はこうした基礎的あるいは基盤的な発見や発明を製品技術へ,そして事業化にコネクトすることが私のその後の 30 年となります. |
技術は世の中で使われてやっと技術と呼べるのです.30 年以上前に大学の研究室で生み出したリチウム層間化合物は 15 年を経て,NanoGram というベンチャーの枠組みの中でナノ材料を使ったリチウムイオンバッテリーの製品へと進化したのです.その間大企業の基礎研究所から新事業戦略部門を経てナノテクベンチャー創業に至る過程は,基盤研究から事業化へハシゴを一歩一歩上る道でした.多くの重要な節目で,新たな革新が続きました.スピードと効率的な R&D 投資,そして最高レベルの人材によって,ナノテクのような将来のものとしかみられなかった基盤技術が製品となって世の中に出て行ったし,これからも出て行くのです.振り返ってベンチャーという枠組みがあったこそ先駆けの事業化ができたと信じています.因みに,NanoGram というベンチャーはアメリカでもよく知られました.ひとつの理由は,創り上げた基盤技術の応用として,体内に埋め込むタイプの医療用バッテリーを開発・事業化するベンチャーを分社し,有力な医療機器企業と共同開発に入って 10 数ヶ月で,世界的な医療用パワーデバイス企業に高額で買収されたことにあります.これがアメリカでもおそらく最初のナノテクベンチャーの成功事例であると評価されています.また昨年には,ナノガラスの光 IC 応用技術を持って分社化した別のベンチャーが株式上場を果たしました. |
私は,1年半ほど前から,自分のミッションを教育に置いています.といっても大学や大学院で教えるのはほんの一部の作業です.主体は,次世代の起業家たちが有する先端材料応用に関する革新的技術を事業化する際の支援です.彼らのベンチャーが成功するための教育ならびに財政面・技術&事業開発面の支援事業です.Phoenix Venture Partners というシリコンバレーに設立した組織です.幸いにして,日米欧の三極からグローバル企業数社と公的機関や金融機関からの投資を受け,出帆しました. |
こうしたグローバルなベンチャー体験から学んだことは沢山ありますが,ユニバーサルに有用と考えるのは次の3つのメッセージです.
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最後になりましたが,同期の皆様に受賞の報告,そして近況や私からのメッセージを共有できる喜びを与えてくれた同期の幹事の皆様に感謝いたします. |
(ご本人からいただいたメッセージ) |