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要点: 意思決定をするときは,済んでしまった過去に因われない(ポイントは“時点”).
参考: 埋没費用, “コンコルドの誤り” − ♪, 事例, 説明.
目的: 現在と未来における合理的な意思決定をする.
方針: 過去に発生した取り戻すことのできない埋没費用には拘泥しない.
関連する成句: 覆水盆に返らず. 過去と他人は変えられないが,未来と自分は変えられる.(by Eric Berne, or by Alfred Adler)
例題: ある新製品について,調査費 1,000 万円をかけて収益性を調査した結果,2,000 万円の投資をして(現在価値で) 2,500 万円の収入しか得られないことがわかった.この投資はすべきか.
収支 | 投資しない場合 | 投資する場合 | 時点 | 備考 |
調査費 | −1,000 | −1,000 | 過去 | ← 埋没費用(回収不能) |
投資 |
0 |
−2,000 | 現在 | 下の欄だけを比較しても差額は同じ |
収入 |
0 |
+2,500 | 未来 |
解説: 投資しない場合に過去の調査費を忘れて 0 と考え,投資する場合は調査費も含めて合計 −500 と考えるのは明らかな誤り(錯覚).どちらの場合も埋没費用である調査費は考えず,0 対 +500 と考えるのが適切(もし調査費も含めるなら,−1,000 対 −500 であって,やはり投資するほうが 500 だけ有利).もし調査を開始する前の時点で上表の金額が全て分かっていれば,もちろん調査も投資もしないほうがよい(ポイントは“時点”).
一般論: 埋没費用は,現在の意思決定によらない,過去の回収不能な費用である.したがって,埋没費用は考慮せずに問題を現在と未来だけに単純化したほうが,現在の意思決定を誤らないで済む.
錯覚の原因: よくある誤った考え方は,“もったいない”精神に基づくのかもしれない.(子どもはそういう精神をもたないので,埋没費用に影響されない正しい判断を下すらしい.) “いきがかり”説や,“自分の否を認めたくないからだ”という説もある. [集団淘汰説].
備考: 減価償却費は,埋没費用が変形した代表的なもの.過去に支払いが済んだ埋没費用を,便宜的に毎年に均して計上している仮想的な費用(仮想的だからこそ,定額法,定率法などが選べる).意思決定が,減価償却費に影響されてはならない.
著作の動機: 意思決定時に埋没費用を考えなくてもよいということは,ひとたび分かってしまえば何でもないが,なかなか納得できない人もいる.ところが,誰にでも納得できるような説明がわかりやすく書いてある書物や Web ページが見当たらない.そこで,授業での経験に基づいて,表を使って全体の構造を説明する Web ページを作成してみた.
更新 2021-10-28 ← 2018-11-21 ← 2018-01-20 ← 2017-02-18 ← 2016-03 作成
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