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猿壁城
さっかべ じょう

論文と縄張図
改訂: 2014-07-17

使用している城郭用語の概説 猿壁城の画像と行き方

dot 報告.doc (39KB) …… 下記文書と同一(ただし,縦書き,漢数字)

掲載: 『中世城郭研究』第28号,中世城郭研究会, 2014-07-31, pp. 176-177.

猿壁城

西村 和夫

(1) 所在地: 茨城県石岡市小屋 字上山 および 石岡市小山田 字石田地図

(2) 標高/比高 242m/198m

(3) 主要参考文献: 『八郷町史』*1 *2八郷町, 2005 / 関 肇(編)『八郷町の中世城館』八郷町教育委員会, 2000.

(4) 掲載した国土地理院発行 1/25,000 地形図の図名: 加波山

(*) Web ページ: 猿壁城(石岡市小屋)・根古屋城(鯨岡城・石岡市小山田), 余湖くんのホームページ, 参照日 2014-06-29


地形図 1/25000
地形図上の位置と大手道 (1辺が 1km)

猿壁城は,足尾山から東南東に 2km ほど延びた尾根の先端に築かれている.足尾山(標高 628m)とその北方 2km にある加波山(標高 709m)を通筑波連山は,この地域を東西に分割していて,その西側は真壁町である.猿壁城は,上曽城から北に 1.5km の位置にあり,小田城からは北北東に 13km である.真壁城からは東に 4km である.

小田氏の 2 代知重の四男知賢は,この地の領主となり,上曽(うわそ)氏を名乗った.現状の猿壁城は,真壁から足尾山を経由して小屋に至る間道を抑える城として,上曽氏が築いたものであろう.

猿壁城の縄張り図 - (C) 西村和夫 2014

城の構造は,単郭に近い.足尾山との尾根続きの部分(北西側)を最も厳重にしていて,2 重の堀切 C と D を設けている.これらに対応して,南側の斜面には竪堀 A と B がある.北東側にある傾斜が緩くて幅の広い尾根に対しては,土塁 E と横堀を設けている.

郭 1 の内を注意してみると,4 段になっている.ただし,各段の切岸の傾斜は緩い.各段の削平も甘く,傾斜が残る.古い時代の城のままなのかもしれない.G に枡形の痕跡のようなものも見られるが,不明瞭である.

郭 1 の 7 メートル下には堀切 D がある.その外側に郭 2 があり,郭 2 の上面は尾根側と北東側を土塁で囲っている.郭 2 の北側には腰曲輪 3 がある.それらの外側には,弧状の堀切 C がある.この堀切の先は,足尾山に続く幅広の尾根であり,自然地形のままである.

堀切 D の南端の郭 1 側には竪堀 B があり,竪堀の東側の切岸は岩盤がむき出しになっている.堀切 D は,郭 1 の北側に回り込んで横堀となっている.横堀の外側には土塁 E がある.

南側の斜面を 2 重の竪堀で遮断しているのに対し,腰曲輪 3 の北東側の谷に展開した敵には射撃で応戦する構えになっている.腰曲輪 3 と郭 2,および土塁 E と郭 1 の,それぞれ 2 段の陣地から射撃ができる.

竪堀 A の脇には,現在も麓に続く直線状の道があり,おそらくこれが大手道であろう(『八郷町の中世城館』掲載の都市計画図にはこの道が示されている*1.郭 2 の北側の腰曲輪 3 は堀切 C との高低差が現状で 1.5m しかなく,大手道はここを通っていたと思われる.現在は腰曲輪 3 の脇の堀切 D から直接郭 1 に上がる道があるが,当時はいったん横堀を東進し,小さな平場 F から「く」の字形の坂道を上がって郭 1 の G に至ったのではないかと推測する.

郭 2 には,堀切 D のどこかから上がったと思われる.堀切 C の南端から郭 2 に上がる急な坂道があり,虎口かと見まがうが,当初からあって竪堀 A とつながっていた崩れであろう.なぜなら,坂が急すぎるし,郭 2 に上がっても郭 1 方面に渡るはっきりした道がないからである.

東側の麓から緩斜面を通って土塁 E に至る道がある.南東側の麓から H に至る道が残り,H から郭 1 下の北側を廻って F に至る.また,H から郭 1 に上がって南側の縁を通る道もあるが,後世の道かもしれない.

*1 この情報は,石岡市教育委員会文化振興課 小杉山大輔様に提供していただきました.ここに感謝いたします.

*2 藤井尚夫氏による『八郷町史』掲載図は,[藤井戦国史] の [築城流儀] にも掲載されている.

猿壁城の画像と行き方


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