バプーオン城
(Baphuon) [Angkor Thom, Siem Reap, Cambodia]
更新 2015-10-05 ← 2015-08-21
縄張りファンのためのカンボジアの城の紹介
城塞が,後に寺院になったものと思われる.
東西 120m,南北 100m.高さ 34m.
11世紀中頃 (1060?) に,ウダヤーディチャヴァルマン2世 (Udayadityavarman II) が造った.
バプーンの現状は,アンコール遺跡にある寺院の一つとなっている.12世紀末にジャヤーヴァルマン7世が建立したアンコール・トムに取り込まれ,その中心となるバイヨン王宮はバプーンの南側に隣接して築かれた.
バプーンは,明らかに城郭である.理由:
- 南面と北面に堀と外土塁が造られていて,土塁が高い (3m).(東面と西面の土塁と堀は,12 世紀末の改修で失われたのではないか.)
- 北西部の土塁外側に桝形が造られていて,3箇所の各門は小さく,東西の門は埋み門になっている.(これは,12 世紀末の追加かもしれない.)
- 本城の東門が,1階の東端(階段直上)に設置されている.
- 東門に上がる3つの階段のうち,実際に上がれるのは中央の1つだけであり,他はダミーである(入口が並んで3つあるのが当時の寺院様式).
- 東門の左右の(容易には上がれないダミーの)階段上部にはテラスがなく,中央の階段上部から左右に回り込めない.
- 2階から3階への階段は回廊ぎりぎり (0.6m) に造られていて,内部の通路を狭めている.
その他の傍証:
- 外郭の門(玄関)から本城の東門(ピミアナカス門)までの通路が不必要に長い (200m).
- 通路の左右に水堀がある.
- 通路に中門があり,その左右は水堀になっていて,門と水堀との間は狭い (2m).
- 本城は,小山に築かれている.
- 各階の全周囲が回廊(多聞櫓)になっている(ただし,これは当時の寺院建築に共通).
- 各階の間の階段が急である(ただし,これは当時の寺院建築に共通).
- 階段位置の櫓は外に張り出していて,横矢掛になっている.
- Baphuon は「子隠し」という意味であり,「シャムとの戦争時に王子を隠した」という言い伝えがある(出典不明).
以上のとおり,バプーンは,逼塞性の高い城塞である.
立て籠ったら出撃はできそうになく,防戦一方にならざるを得ない城塞である.
バプーンは,アンコール・トムの中心であるバイヨンに隣接している(バイヨン北門からバプーンの玄関まで 100m).
周囲に水は豊富であるが,本城内部に井戸はなさそうだった.
収容できるのは,(雨季で水があっても)せいぜい 2,000 人程度であり,大部隊の駐留はできない.
バプーンには,城郭として,次の機能があったのではないか.
- 戦闘時に,王侯貴族が身を隠す.
- 王侯の財産を保全する.
- 人質を隔離し,脱出を妨げる.
- 上記によって,味方の離反を防ぐ.
- 留守部隊の詰めの城(王侯がいるなら,親衛隊に限る).
外部ページ:
Wikipedia の解説.
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(1) 玄関からの通路と中門
(2) 本城の1階(三の丸)
(3) 2階(二の丸)から3階(本丸)
(4) 3階(本丸)から搦手門