慶應義塾大学工学部 1974 年卒(32 期)同期会 |
連合三田会大会(2012 年 10 月 21 日)当日の 32(ミニ)講演会の内容 |
「シニアよ、IT をもって地域にもどろう」というタイトルで,山田 肇 君に老後への取組みについて話していただきました.
山田 肇 君(同期 計測工学科卒)
山田君の話は,60 歳を越してライフスタイルが変わる時期を迎えた我々が,これからの生き方を考えるきっかけになりました.
参加人数: 同期生 = 26 名,家族 + 一般 = 6 名
藤野 明夫 君(管理工学科卒)の報告
2012 年 32講演会概要
【日時】 2012 年 10 月 21 日(日)11:00〜12:30(連合三田会)
【場所】 日吉キャンパス 大学第4校舎 J425 教室
【講師】 山田 肇 君(同期 計測工学科卒)
【テーマ】 「シニアよ、IT をもって地域にもどろう」
【内容】
2012 年発表の「全国将来人口推計」によれば,生産年齢人口(15〜65 歳)は,2010 年の 8173 万人から 2060 年には 4418 万人に減少し,老年人口(65 歳以上)は 2498 万人から 3464 万人に増加する.
これに対応するには,二つの戦略が考えられる.
本日は,戦略 I を主に論じる.
生活不活発病(廃用症候群)
歩くのがむずかしく疲れやすくなるので,動かないでいると症状が進む病気.大震災被災者などの仮設住宅生活で悪化する例が多い.
世田谷区における認知症予防プログラムの評価研究
継続して認知予防プログラム(ウォーキング,筋力トレーニング,旅行,園芸,ミニコミ誌の作成など)を提供.
予防プログラムに参加した群と,調査には協力したがプログラムには参加しなかった群の 2 群に分けて比較したところ,参加群と非参加群で認知症進行に有意な差があった(参加群の方が進行が遅い).
つまり,「老化の進みが遅いから社会に関わっていた」のではなく,「社会と関わっていたから老化の進みが遅かった」.
僕ら自身も,社会と関わっていくことで,生き生きとした老後を過ごすことができる.
例: 囲碁,将棋,麻雀,園芸,料理,パソコン,旅行(自ら計画する),ウォーキング,水泳,体操,器具を使わない筋力トレーニングなど
準備は早めに,会社人間も合間には地域に関心を向けよう.
関心を共有する仲間(コミュニティー)を,個人のメールアドレスを取得しよう.
ブログ,Facebook などで個人での情報発信も,地域のコミュニティーにお試しで参加しよう.
自己紹介のつぼは: 会社の職位など何の役にも立たない.何に興味をもっているか,どのように地域に関わりたいか.
女性の力を借りよう.
起業しよう: 起業した仲間が助け合えば,新たなビジネスにつながる可能性もある.
Q1: 端的にいうと,「体を使うより,頭を使え.頭を使うより金儲け(起業)をしろ.」ということか?
A1: そのとおり.
Q2: 「老化の進みが遅いから社会に関わっていた」のではなく,「社会と関わっていたから老化の進みが遅かった」という因果律が本当に成り立つのか.
A2: 厳密にいうと証明できているわけではない.老年学は厳密さを求めることが難しい.
たとえば,機能的健康度が落ちるパターンの調査なども,すでにある年齢になった人の調査であり,過去の人たちの調査である.生まれ育った環境が全く異なる我々に当てはまるかどうかは,本当は分からない.しかし,それを言ってしまうと,そもそも老年学そのものが成り立たなくなる.その限界をわきまえた上で論じる必要がある.
「シニアよ、IT をもって地域にもどろう」
「スマートエイジング入門」
我々,還暦超えの世代にとって,事例も豊富で説得力ある展開で,触発されるところの多い,たいへん有意義な講演であった.提言に従って,IT をもって地域にもどることを真剣に考えたい.
山田 肇 君の紹介
1976 年,旧電電公社(現NTT)に入社. 2002 年より東洋大学経済学部教授. 高齢者等に情報通信の利便を提供する情報アクセシビリティの標準化活動で,2007 年に経済産業大臣表彰. 著書に「シニアよ、IT を持って地域にもどろう」など.