中世城郭研究会は 1971 年の創立から 44 年間,城郭専門の研究会として活動しています.毎年開催している「全国城郭研究者セミナー」も今年(2015 年)で第 32 回になりました.「全国城郭研究者セミナーの理念」の内容は,現在ではやや堅苦しく感じるかもしれません.しかし,中世(とくに戦国期)の人々が築いた歴史の証人とも呼べる「城郭」に対して,歴史の専門家に限らず地域社会全体が関心を向けるべきであるという考えは,現在の研究会に受け継がれています.
城跡の「城郭」としての構造を理解するのに有用な縄張図(なわばりず)の見方を学ぶ機会は,めったにないのが現状です.近年は,全国各地で中世城郭ほぼ全域の大規模な発掘調査や史跡整備もされるなど,復元や整備の観点からも中世城郭の縄張りへの関心が非常に高くなっています.中世城郭の構造の研究においては,縄張図を作成して検討を加えるという手法で成果が積み重ねられてきました.しかし,現状では縄張図について知る機会がまだまだ不足しているのが明らかです.歴史を学ぶ学生の皆さんでも,実際の縄張りに基づいて城郭を知る場は,非常に限られているようです.
今回の見学会は,中世城郭研究会の発足当時から城郭構造を専門に研究してきた会員による,中世城郭の実例を用いた歴史資料の解説といえる,たいへん貴重な内容です.戦国期に関心はあるが城跡には石碑しかなくて写真に撮るものがないといった方や,それなりに城郭を見学してきたが縄張図の見方が難しいと感じる方などが,中世城郭の見所や縄張図の見方を知る絶好の機会でしょう.見学対象の小机城は,初めて城郭構造に接する方にもわかりやすい城郭です.秋の手軽なハイキングとしても楽しめるでしょう.
中世城郭について知りたいという気持ちが少しでもあれば,ぜひご検討ください.ご参加をお待ちいたしております.
2015 年 9 月 14 日