中世城郭研究会は 1971 年の創立から 45 年間,城郭専門の研究会として活動しています.毎年開催している「全国城郭研究者セミナー」も今年(2016 年)で第 33 回になりました.「全国城郭研究者セミナーの理念」の内容は,現在ではやや堅苦しく感じられるかもしれません.しかし,中世(とくに戦国期)の人々が築いた歴史の証人とも呼べる「城郭」に対して,専門家に限らず地域社会全体が関心を向けるべきであるという考えは,現在の研究会に受け継がれています.
2015 年に開催した小机城見学会はお陰さまで多くのかたがたに関心を寄せていただき,会員も含めて総勢 50 名以上が参加する盛会となりました.あらためて中世城郭への関心の大きさと,縄張図(なわばりず)研究の意義を感じました.
2016 年度は,初めて城郭構造に接するかたがたを多数ご案内するにふさわしい城郭について時間をかけて話し合いました.また,前回の小机城見学会にご参加いただいた皆さまにも,ぜひ継続して楽しんでいただきたいと考えました.そこで,初めて中世城郭をご覧になる方には教科書的な事例として,すでに中世城郭に関する知識や経験をおもちの方には城郭研究の最先端に触れていただく機会として,杉山城を見学対象としました.
杉山城は,近年では研究論争の舞台として城郭研究者の注目を集めていることで知られています.しかし,従来から関東近県で中世の遺構がほぼ当時のままとてもよく観察できる優れた城郭として極めて高く評価されてきました.
最寄りの東武東上本線「武蔵嵐山駅」からは片道約 40 分ほど歩きますが,道中も会員による中世城郭に関する解説を行います.見学後に駅へ戻る道のりは,中世城郭研究会の発足当時から城郭構造を専門に研究してきた会員に気軽にご質問いただく良い機会となるでしょう.
中世城郭への知見を深める見学会を,ぜひご検討ください.ご参加をお待ちいたしております.
2016 年 8 月吉日